2012年9月7日金曜日

119:市民議員立法・脱原発基本法案が国会提出。継続審議される法案全文を掲載します

 本日、日本時間の午前9時15分に、超党派の衆議院議員の36名の賛成を得て国会に提出された脱原発基本法案がついに提出されました。衆議院ではさらに賛同する議員が43名、参議院では24名が賛同しており、賛成、賛同の議員の数は合計で103名です。
同法案は、国策としての原発推進を、福島事故の教訓「虚構の安全神話」によって国策としての脱原発政策へ転換し、それを「遅くとも平成三十二年から平成三十七年までできる限り早い三月十一日までに実現されなければならない」と明記しています。すなわち2020年から2025年の年度末を最終期限としています。
 すなわち、超党派の脱原発会派国会議員の最大公約数をまとめた基本法です。
とはいえ、ドイツの脱原発法では最後の原発は2022年年末ですから、ドイツよりも完全廃炉が早く実現する可能性があります。素晴らしいことです。

これによって1989年から90年にかけて、高木仁三郎氏らのイニシアチブで350万の賛同署名を集めながら、国会提出にいたらなかった未完の意思が、ようやく本日実現しました。日本の市民は、ようやく国策としての脱原発を実現する画期的な市民議員立法案を国会の場に持ち込んだことになります。その意味で今日は歴史的な日と言えます。

今国会会期は明日に終了しますので次期国会での継続審議となりました。もちろん103名では法案成立は不可能ですから、賛成議員を過半数とするべく、次は総選挙での有権者の出番となります。
この法案を基にして、脱原発候補者、エセ脱原発候補者、原発推進候補者を明確に見分けることができます。有権者はまたとない民主主義実現の武器を手にしたのです。

これを基本に脱原発、持続可能エネルギー社会を実現して初めて、日本はフクシマ事故で教訓を得た社会として核兵器と原発で苦しむ世界で全うな未来を選択をした国として、「第二の敗戦」で再び傷つきながらも、国際社会で名誉ある地位をしめることが可能になるのです。
苦しみながらも誇りをもって脱原発で持続可能社会を創りましょう。

本日の詳しい報告は脱原発法制定全国ネットワークのHPでの→海渡雄一弁護士の報告
ご覧ください。 そこには詳しい経過とこれからの活動の呼びかけとともに、提出された法案オリジナル、賛成・賛同議員のリストの資料などもあります。

また原子力資料情報室の高木仁三郎氏の後継者のひとりである→伴 英幸氏の今日の報告もご参考に。
提出後、議員会館で行われた→提出報告の記者会見はIWJで記録されています。

なお、9月8日発売の→『世界』10月号に河合、海渡両弁護士による寄稿脱原発法で原発推進の国策にとどめを」がありますので、さっそくご覧ください(8日追加)。

 以下は法案の全文です。

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           脱原発基本法案 

 東日本大震災における原子力発電所事故から学び取るべきもは何か世界で唯一原子爆弾被爆国でありながら虚構安全神話下で推進してきた我が国電力政策見直しが重要な課題であることは論をまたない

 原子力発電は潜在的な危険性高さにおいても放射性廃棄物処理においても信頼性及び安全性が確保されたエネルギーではない一旦事故が起これば 幾多人々が故郷を追われ働く場を失い家族を引き裂かれるみならず周辺地域や国民経済に与える甚大な被害や人々不安と恐怖を考えればむしろエ ネルギーとして極めて脆(ぜい)弱なもであった

 原子力発電所において重大な事故が発生した場合に被害を受ける原子力発電利益を享受している現在世代人間にとどまらない将来世代人間 事故に起因する数々危険にさらされるまた事故が発生しなくてもいまだに放射性廃棄物最終処理道筋が確立しておらず仮に確立できたと しても十万年以上長い管理が必要とされる原子力発電所事故がもたらす重大な影響を知った我々は今こそ脱原発意思決定をする責務がある

 一方今後我が国は低炭素社会を目指すとともに経済活力を維持することが不可欠である省エネルギーを一層推進すること再生可能エネルギー電気 を普及させること発電方式等を高効率化することエネルギー地産地消を促進すること等と併せ原発立地地域経済雇用対策も重要である

 な状況に鑑み原子力発電を利用しなくなることに伴各般課題へ適確な対応を図りつつ原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を早期に確立することは緊要な課題である

 ここに我々は国家として脱原発を明確にし確実な実現を図るため法律を制定する

 (目的
第一条 法律は原子力発電所事故による災害が発生した場合に国民生命身体又は財産に重大な危険が生ずること及び経済社会に及ぼす被害が甚大に なること原子力発電利用を継続した場合に使用済燃料原子炉において燃料として使用された物質をい以下同じ。)長期にわたる保存及び管理が一層 困難となること等に鑑み脱原発について基本理念を定め国等責務を明らかにするとともに脱原発ため施策に関する基本的な計画について定めることによりできる限り早期に脱原発実現を図りもって国民生命身体又は財産を守るとともに国民経済安定を確保することを目的とする

 (定義
第二条 法律において、「脱原発とは原子力発電を利用しなくなることに伴各般課題へ適確な対応を図りつつ原子力発電を利用せずに電気を安定的に供給する体制を確立することをい
 法律において、「再生可能エネルギー電気とは太陽光風力等再生可能エネルギー源を変換して得られる電気をい

 (基本理念
第三条 脱原発は遅くとも平成三十二年から平成三十七年までできる限り早い三月十一日までに実現されなければならない

 脱原発を実現するに当たっては電気安定的な供給に支障が生ずることとならないよかつ二酸化炭素排出量増加ができる限り抑制されるよ 省エネルギーエネルギー使用合理化をい以下同じ。)が一層推進されるとともに再生可能エネルギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気 利用拡大が図られるもとする

 脱原発を実現するに当たって生ずる原子力発電所が立地している地域及びそ周辺地域経済へ影響については発生が国政策転換に伴であることを踏まえ適切な対策が講じられるもとする

 脱原発を実現するに際し発電用に供する原子炉は運転を廃止するまで間においても最新科学的知見に基づいて定められる原子炉等による災 防止ため基準に適合していると認められた後でなければ運転運転再開を含む。)をしてはならないもとする

 (責務
第四条 国は前条基本理念にっとり脱原発を実現するため施策を総合的に策定し脱原発を実現するため省エネルギー推進並びに再生可能エネル ギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気利用拡大ために必要な政策を推進するとともに脱原発を実現するに当たって生じ得る原子力発電所を設 置している電気事業者等以下原子力電気事業者等とい。)損失に適切に対処する責務を有する

 国は前条基本理念にっとり脱原発を実現するに当たって原子力発電所が立地している地域及びそ周辺地域における雇用状況悪化等問題が生じないよエネルギー産業における雇用機会拡大ため措置を含め十分な雇用対策を講ずる責務を有する

 (地方公共団体責務
第五条 地方公共団体は第三条基本理念にっとり施策を当該地域において実施するために必要な施策を推進する責務を有する

 (原子力電気事業者等責務
第六条 原子力電気事業者等は第三条基本理念にっとり第八条第一項に規定する脱原発基本計画に基づいて脱原発を推進する責務を有する

 (法制上措置等
第七条 国は法律目的を達成するため必要な関係法令制定又は改廃を行わなければならない

 政府は法律目的を達成するため必要な財政上措置そ措置を講じなければならない
 (脱原発基本計画

第八条 政府は脱原発を計画的に推進するため脱原発ため施策に関する基本的な計画以下脱原発基本計画とい。)を定めなければならない

 脱原発基本計画は次に掲げる事項について定めるもとする
  発電用に供する原子炉運転廃止に関する事項
  電気安定供給を維持し及び電気料金高騰を防ぐために必要な措置省エネルギー推進及び化石燃料適切な調達を含む。)に関する事項
  再生可能エネルギー電気及び天然ガスを熱源として得られる電気利用拡大並びにエネルギー源効率的な利用に関する事項
  発電に係る事業と変電送電及び配電に係る事業と分離等実施に関する事項
  発電変電送電又は配電用に供する施設によって構成される電力系統強化等電気供給に係る体制改革に関する事項
  発電用に供する原子炉運転廃止を促進するため原子力電気事業者等へ支援そ他脱原発を実現するに当たって生じ得る原子力電気事業者等損失へ対処に関する事項
  原子力発電所が立地している地域及びそ周辺地域における雇用機会創出及び地域経済健全な発展に関する事項
  使用済燃料保存及び管理進め方に関する事項
  発電用に供する原子炉廃止に関連する放射性物質により汚染された廃棄物処理放射性物質による環境汚染へ対処原子炉において燃料として使用される物質防護等ため措置に関する事項
  発電用に供する原子炉廃止及び前号に掲げる事項に係る原子力に関連する技術並びにそ研究水準向上並びにそため人材確保に関する事項
 十一 他脱原発実現に関し必要な措置に関する事項

 内閣総理大臣は脱原発基本計画案を作成し閣議決定を求めなければならない

 内閣総理大臣は前項規定により脱原発基本計画案を作成しよとするときはあらかじめ関係行政機関当該行政機関が合議制機関である場合にあっては当該行政機関と協議するもとする

 原子力規制委員会は前項規定により内閣総理大臣に協議を求められたときは必要な協力を行わなければならない

 内閣総理大臣は第三項規定による閣議決定があったときは遅滞なく脱原発基本計画を公表しなければならない

 第三項から前項まで規定は脱原発基本計画変更について準用する
 
 (年次報告
第九条 政府は毎年国会に脱原発基本計画実施状況に関する報告書を提出しなければならない

    
 法律は公布日から施行する