2014年7月25日金曜日

260;日独市民がドイツ首相府前で第600回脱原発警告行動/追加ビデオあり・600ste Antiatom-Mahnwache am Kanzleramt Berlin 24.7.2014

 Gestern am 24.7.2014 hat 600ste →Antiatom-Mahnwache am Kanzleramt Berlin stattgefunden. Mehr als 40 deutsche u. japanische Atomgegner haben teilgenommen.
Auch Aktionkünstler"Gingoman"→ Ben Wagin hat vorbeigeschaut.
(Sehe auch hier ganz unten,einen Zeitungsartikel über seine Aktion .25.Juli 2014)
 Bilderbericht: 
Zusatz::am Ende sehen Sie sehr gute Videodokumentation.

前回予告しましたとおり、昨日7月24日、フクシマ事故以来毎週2度絶え間なく続けられているドイツの脱原発市民によるベルリンの首相府前での警告行動が、第600回を迎えました。あいにくの悪天候でしたが、今回は日本人市民も参加して約40名が、脱原発と再生可能エネルギー社会の実現を訴えました。

(追加です:末尾に非常に良いビデオ記録を追加しました。)

その写真報告です。(クリックでパノラマで見れます)

ベルリンは、ここ一週間、30度を超える晴天の夏日でしたが、この日、天候が一変して雨模様でした。首相府の正門の空も雨雲で風も強いですね。
6時前に主催者のルッツさんがスピーカーなどの七つ道具をもって到着。
そこに一番乗りしたのは、原発お断りの旗を掲げた5歳の男の子。
この子は日独のダブルです。立派なバイリンガルの反原発の旗手ですね。
大人たちも三々五々集まり始めました。
まずは主催者の挨拶から始まります。
実はベルリンには古い実験用原子炉があり、それの完全廃止を要求する横断幕も登場。
おなじみの日本人女性グループも登場。
子供と地球を守ろう。

死神が現れ、原発に引導を渡す仏具の鉦が鳴らされます。これは良く響きますね。
珍しいものは子供がたちまちやるものです。このあたりから小雨が降り出しました。
この日は、→Regenwald/「熱帯雨林」という自然保護団体の太鼓隊が特別参加です。
雨のため木の下へ移動しました。

ふたりの女性は地理学の学生さんだそうです。
太鼓の音は首相府の中までとどいています。考えてみれば太鼓は、元来遠くまで音で意志を伝える道具なのだから当たり前ですね。
今日は温帯雨林の太鼓となりました。

首相府のテラスで聴いている人々もいました。
反原発運動は全天候ですから、傘もちゃんとあります。
被曝死ストップ!
そこに、雨にもかかわらず自転車で現れたのが、ドイツでは有名なアクション芸術家の、通称「Gingomann/銀杏男』→ベン・ワギンさん。現在84歳の彼は銀杏など樹木を植える芸術家として知られています。わたしの顔を見るなり「お、君も頑張っとるな」。


600回も頑張り続けているルッツさんに参加者の女性から、感謝の記念の本が送られました。太陽光発電のパイオニアであった→ヘルマン・シェーアさんの古典的著作です。
→日本語の翻訳もあります。
このルッツさん、元々は自動車業界の技術屋でしたが、環境汚染に責任を感じて今では自動車を持っていません。「体力の続く限りこの行動は続ける」と嬉しそうです。
最後に、みんなで首相府に向けて「原発を停止せよ」、「石炭、原発の代わりに太陽光を」などの鳴り物入りのシュプレヒコール。フクシマ以降、メルケル首相も直接いやというほど耳にしています。
日本に向けては「川内原発再稼働反対」のシュプレヒコールも行われ、この日の行動は終わりました。666回目にはまた記念行動を呼びかけるそうです。

参加のみなさまご苦労様でした。

ところで、東京の首相官邸前のデモと違うのは、警察官の姿がまったく見られないことですね。 それどころか、ルッツさん曰く「600回やっても、首相府からコーヒーのふるまいすら一度もない。失礼な首相だ!」。これが民主社会の一市民の立ち位置の意志を良く表現している言葉です。「主権者に対して、なんと失礼な政府だ」というのです。


追加です。本日7月25日の新聞に上記ベン・ワギンさんについての記事がありましたので追加しておきます。クリックすれば拡大して読めます。(ただ、彼の芸術名の姓が間違って書かれています。 Waginが正しいのです。)

Berliner Zeitung 25 Juli 2014 S.15

再追加27日:わずか1時間のアクションを40分にまとめたビデオ録画がでましたので追加します。これの→オリジナルはこちらです。
 またベルリンの全国紙→TAZも報道しました。

 それにしても、ビデオには勝てませんね。明日うらしまじいさんの取材ぶりもバレてしまうではないですか。太鼓と鉦、また風雨の音までリアルです。画質もいいですね。

2014年7月17日木曜日

259:ベルリンから脱原発エネルギー転換最新情報/書評・コラム・警告行動600回記念予告

 ベルリンから脱原発とエネルギー転換に関する最新の情報を以下にまとめてお知らせします。

*書評:『「脱ひばく」命を守る』松井英介著

 このオブログでもおなじみで、最近は「美味しんぼ鼻血問題」で安倍政権の閣僚までよってたかって「低線量被曝無害宣伝神話」の「敵」としてたたかれている松井英介医師の最新の本に関するものです。
ベッルリンから梶川ゆうさんが、先週出版されたばかりの→『「脱ひばく」命を守る』→書評をブログで書いておられますので紹介します。

わたしから付け加えるとすれば、左の写真にはありませんが本書には帯がついており、そこには:

  美味しんぼに描かれていることは事実だ
福島苦悩──原発放射能真実
低線量内部被曝健康問題に一貫して取り組み
美味しんぼに実名で登場した医師から緊急提言

とあります。
 事実、この文句には誇張はなく、臨床医師としてフクシマの人たちによりそって奮闘する松井氏が、豊富な科学的な図表や写真を、できるだけ市民にもわかりやすく解説した、ここ3年間の啓蒙活動の集大成といえるものです。
この内容からすれば、驚くほど安価ですので、「脱ひばく」に直面されている各家庭の必携書としてお勧めします。実際に役立ちます。

*ドイツの改訂再生可能エネルギー法に関する最新のコラム

 先日、ここでも紹介しましたドイツ連邦議会で先月末に承認された→改正再生可能エネルギー法は、その後、上院でも賛成決議され、またEUヨーロッパ同盟の委員会からのクレーム問題も解決し、新法は8月1日から施行されます。
これとの関連で、ベルリンの若い日本人の研究者と専門家が、日本の「自然エネルギー財団」のHPに新しくもうけられた連載コラムで紹介しています。

一柳絵美:

→ドイツ市民93%が重要視するエネルギー転換


梶村良太郎:

→ドイツ再生可能エネルギー法見直しは成功


*首相府前の脱原発警告デモの第600回記念行動・7月24日木曜日

フクシマ事故が起こってから、ベルリンの約30名の市民が集まって、毎週月曜日と木曜日に首相府の正門前で1時間のMahnwacheを中断なく続けています。 この言葉は、「立ち続けてあることを警告する行動」という意味です。ドイツの市民運動では良く行われます。
なんと、7月24日の木曜日には、この行動が第600回目記念!を迎えるので、例外的に参加の呼びかけがあります。彼らは→4月末の安倍訪独歓迎デモにも参加しています。
連帯を示して日本人市民も参加しましょう。

   7月24日木曜日18時ー19時首相官邸正門 に集まりましょう。

おまけですが、この市民仲間の→ホームページの表紙に入りますと上の写真があります。 写真をクリックすると有名な「alle strahlen・なにもかも放射する」という放射線の特性を唱ったリートが聴けます。チェルノブイリ事故のあとにできた伝統的なドイツの反原発歌です。



2014年7月13日日曜日

258:パレスチナ情報転載:「子どもたちの眼に羞恥ではなく、“誇り”をみたい」 ―ラジ・スラーニ氏・インタビュー/追加情報あり

 2008年末と2012年に続いてイスラエルとパレスチナのガザ地区での「戦争」が、出口の見えないまま深刻化しています。昼夜を問わないイスラエル軍の爆撃で、現時点でパレスチナ河には160人を超える死者と1000人を超える負傷者が出ているとの報道があり時間とともに増加しています。昨日(7月12日)の「南ドイツ新聞」に掲載されたペーター・ミュン匕記者による現場からのルポタージュ「怒りの炎の中で」によると、ガザの病院の医師が「死傷者の3分の2が女性と子供である」と証言しています。

 日本語メディアでは現場からの声が全くとどいていない中、土井敏邦氏が、10日にスカイプでガザの人権活動家弁護士のラジ・スラーニ氏にインタヴューしたものが送られてきましたので、以下そのまま転載します。転載を歓迎します。

追加します:日本人記者としては、これまででは毎日新聞の大治朋子記者が10日頃からエルサレムからガザに入り現場の様子を命がけで伝えています:
→ガザ:「被害、女性と子供ばかり」…ハマス幹部は地下潜伏 

大治記者の現時点での続報はこちらです:





(以下転載 )

===========================================================


「子どもたちの眼に羞恥ではなく、“誇り”をみたい」
―ラジ・スラーニ氏・インタビュー(710日)―


                               土井敏邦

Q・今のガザの状況を教えてください)
 この新たな「戦争」は、3人のユダヤ人入植者が誘拐され殺されたことのきっかですが、イスラエルは事件があったヨルダン川西岸のヘブロン市だけではなく、西岸全体またガザまで攻撃の対象としたのです。西岸では大量にハマスの指導者たちを逮捕し、ヘブロン市とその周辺の村々に外出禁止令を敷き、家を一軒一軒捜査し始めました。また住民の家々を急襲し、住民を脅迫し侮辱し、ハマスの指導者たちの家屋を破壊しました。さらに以前ガザで誘拐されたイスラエル兵(シャリート)との捕虜交換で釈放された元政治犯のパレスチナ人を再び逮捕しました。その数は数百人に及びます。イスラエル軍はパレスチナ自治政府の治安警察も無視して、少しでも不審だと思ったら、たとえ自治政府の人間でも射殺します。彼らはフリーハンドなのです。
 3人のイスラエル人少年の誘拐・殺害後はイスラエルの中に怒りが渦巻き、パレスチナ人少年が犠牲になりました。モハマド・アブクデール(16歳)です。それがまた西岸で怒りと暴力の新たな波を引き起こしたのです。
 また同時に、西岸の事件とはまったく関係のないガザ地区でも、イスラエルは繰り返し、ハマスの指導者たちを暗殺すると脅迫しました。それも公にです。そしてイスラエルの世論は復讐を要求したのです。

 イスラエルは10日前(630日)からF16やドロン(無人飛行機)、アパッチ・ヘリコプターなどによってガザの攻撃を開始しました。いわゆる「クリーンな爆撃」と彼らは言います。それはガザ南端のラファから北端のベイトハヌンまで空爆し、個々人を標的して住民を殺すことはせず、ただ住民の間に恐怖心を植えつけるというのです。そしてガザ全体には安全圏はないと感じさせるようというのです。
 しかしこの「戦争」の最初に、イスラエル軍は6人のハマス武装メンバーを殺害しました。つまりもはや「クリーン」ではないのです。ハマスはそれを受け入れることができません。イスラエルは自らの宣言を破ったのです。それでパレスチナ人側は報復しています。つまりイスラエルが挑発し、この「戦争」は始まったのです。
 それがこの「戦争」の引き金なのです。イスラエルは当初から、ハマスが反撃を開始することを望んでいました。それに応戦し降伏させようと考えていたのです。その空爆のやり方は、気が狂ったように猛烈に激しい爆撃です。ガザ全体を爆撃し、標的にした者は確実に殺害し、破壊する。イスラエルは新たな作戦を作り上げ、12時間の間に24人を殺害し、220人を負傷させました。また85軒の家を破壊しました。その作戦は、例えば私、ラジ・スラーニがハマスがイスラム聖戦のリーダーであったとすれば、私がそこにいようといまいと、私の家を爆撃するのです。F16によってです。ガザ中部のハンユニスのアブ・カワレ一家がその一例です。5人の子どもを含む7人を殺害し、28人を負傷させました。ベイトハヌンのハマッド一家も同様に、近所の男性がコーヒーを飲んでいて、傍にハマッドの妻と母親がその部屋にいました。そのとき空爆され、孫たちを含め6人が死亡したのです。

 イスラエル軍は住民、家族を破壊し抹殺しようとしています。破壊とテロです。軍事的な攻撃目標などないのです。これまで犠牲者の中にハマスやイスラム聖戦のメンバーは6人から多くても10人ほどです。他の犠牲者は一般市民で、その数は今のところ87人です。その数は時間ごとに増えています。武装組織のメンバーたちの大半が地下にもぐって表には出てきません。だからイスラエル軍は彼らの家、農園、インフラを狙って攻撃するのです。そこに人がいようがいまいが構わないのです。住民の殺戮と負傷によって、住民に恐怖を植え付けようとしています。それが、200万人が暮らすこの360平方キロの広さしかない狭いガザ地区で起こっているのです。ここは世界でも最も人口密度の高い地域です。イスラエルにはF16やアパッチ・ヘリコプターがあり武装艦船を持っています。それを用いて24時間、砲爆撃を繰り返しているのです。それだけでは満足せず、ある地域では地対地ミサイルまで用いています。誰も満足に眠ることができません。夜に動くものは、車でもモーターバイクでもすべて爆撃されます。即座に、です。夜の間、ガザをマヒ状態にしようとしています。日中でもガザでは普通の車を使うことが困難です。私は今60歳ですが、こんなことは私の人生の中で一度も経験したことがありません。

 この「戦争」、爆撃の前からガザ地区はとても特殊な状況に置かれていました。これまで2度もイスラエルの激しい攻撃にさらされ、多くの建物は再建されてはいません。また封鎖によって、ガザは経済的にも社会的にも窒息状態に置かれています。その封鎖の影響はあらゆるところに及んでいます。ハマスとファタハの連立政府が成立したばかりですが、ヨルダン川西岸から新たな政府要人がガザへ来て業務を引き継ぐこともできません。ガザ地区は非常にひどい状況下にあるのです。
 現在、イスラエル軍の地上侵攻についての噂が大きくなっています。イスラエルには大きな政治的な意見の分裂があります。ネタニヤフは気が狂っているかようです。もしイスラエル軍がガザ地区に侵攻してきたら、多くのイスラエル兵が殺されます。今は空爆によって、ガザはまさに「象が侵入した庭」のような状況です。しかしイスラエル軍がガザに侵攻したら、何千人という兵士が殺されます。一方、ガザ住民は少なくとも1万から15千人が殺されることが推定されます。イスラエル軍はガザに侵入すると流砂の蟻地獄のような状況になります。だからイスラエルの軍や諜報部門は侵攻を望んでいないのですが、政府が圧力を加えています。しかもまったく仲介者がいません。ハマスはエジプト政権に、「我われはあなた方と話をしたくない。あなた方はイスラエルの側に立っていて、我われはあなた方を信用しない」と言っている。そのハマスの指導層の大半は地下に隠れています。彼らが表に出てくれば、即座に暗殺されるでしょう。

 この事態は短期間では終わらず、長期化すると私は思います。とても困難で、血にまみれたものになるでしょう。何日かではなく、何週間も続きます。
 ガザの住民はまだ抵抗を支持しています。ハマスに対する不平・不満はなく、イスラエルと彼らがやっていることに対して激しい怒りを抱いています。またイスラエルを支持するアメリカやヨーロッパなどの立場と対応に怒っています。20082009年、また2012年のガザ攻撃で犯した罪によってもイスラエルは何の罰も受けなかったので、自分たちは免罪され、やりたいことは何でも自由に行動できると思っている、と多くのガザ住民は感じています。
 ここで起こっていることは簡単です。ここは法が支配する世界ではなく、ジャングルの掟(おきて)が支配している世界なのです。一般市民を保護する基本的で原則的な法さえ欠落しているのです。
私は今国際的な組織と接触をとっています。彼らは住民が標的にされ、多くの人が殺され、負傷していること、ガザ全体に医療品が不足していること、また病気や負傷した人が封鎖によって治療にエジプト側に出られないことをとても心配しています。
 あらゆるガザ住民が不安に震えています。まったく展望が見えないからです。イスラエルはここでは「全能」です。住民は苦しみ泣いています。それは道理にかなったことです。私は最悪の事態が起こることを恐れています。時間が経つごとに、前よりさらに事態は悪化し、今日は前日よりもひどい状態になっています。

Q・夜は動くものが標的にされる中、救急車は動けるのですか)
 爆撃は四六時中続いています。24時間ずっとです。夜に動く物体や人は全て爆撃されます。

Q・もし夜に負傷した場合、どうやって負傷者を病院に運ぶのですか)
 とても難しい状況です。動くのがとても困難なのです。昨夜、ハンユニスの海岸で爆撃がありました。住民はただカフェに座っていただけです。電気もなく、テレビも見られない状態でした。それに対してイスラエル軍は海上の艦船から砲撃したのです。5人が死亡し、20人が負傷しました。病院に駆け込むことができなかったからです。その1人は脚が切断され、本人がその切断された脚を抱えてジャーナリストたちに見せたのです。とても困難な状況です。まったくイスラエルはガザ住民の被害など気にかけない。女性や子どものこともまったく気にかけないのです。

Q・薬品や食料が不足しているとのことですが、説明してください)
 ガザの保健省の大臣が昨日(79日)私のところに電話をしてきて、病院で必要な医薬品の種類の25%が不足しているとのことでした。さらに他の25%も明日までに底をついてしまうというのです。今朝(710日)までの負傷者は520人です。その負傷者のすべてに薬品や手術、縫合糸が必要です。その基本的な薬品がないのです。とても深刻な状況です。いつもなら、エジプトとの国境が開かれ、エジプトやトルコやチュニジア、フランス、英国から医薬品や医者や看護師など医療関係者たちがエジプトから入ってくるのですが、今は誰も救援に来ません。国境が封鎖されているからです。もちろんイスラエル側の境界からも入ってこれません。だから殺戮、負傷、破壊がさらに深刻なレベルとなっているのに、明日(711日)までに医薬品の種類の50%が底をついてしまうのです。
 ICRC(赤十字国際委員会)ガザ支部の幹部と昨日話をしましたが、23日の間に医薬品を搬入しようと試みていますが、それはわずかな量で、不足している薬品全てを補うものにはならないとのことでした。それさえできなければ、深刻な事態になります。
 それ以外にも、手術や透析のための電気が不足しています。またガザ全体が燃料不足の状態です。だから事態はとても複雑な状況です。これは人工的に生み出された大惨事です。

Q・食料は?)
 今のところ、食料は大丈夫です。もちろんいい状況ではありませんが、人々はなんとかしのいでいます。ガザ地区では野菜や果物などが生産できます。しかし長期的にはわかりません。イスラエル側から物資が入ってくる検問所は今、機能していません。だからまもなくこの問題が深刻になるでしょう。ガザ住民の85%に食料を配給しているUNRWA(パレスチナ国連難民救済事業機関)は深刻な危機にあります。深刻な財政難のためであり、食料を搬入できない状態です。すぐに食料配給ができない状況に追い込まれます。しかも今はラマダン(断食月)です。

Q・ラファとエジプト側との地下トンネルはどういう状況ですか。機能していますか。イスラエルがトンネルも爆撃していると聞いていますが) 
 全体としてトンネルは機能していません。物資の搬入は枯渇しています。この23日間、ガザ・エジプト間の14キロの国境線沿いの地域全体をイスラエル軍は爆撃しています。しかも特殊な爆弾によってです。とても大きな重量の爆弾です。

Q・外国のジャーナリストはガザにいるのですか)
 昨日から外国人の存在を確認できました。昨日になってやっとできたのです。BBCワールド、BBCチャンネル4、BBCラジオ、それに「シュピーゲル」などドイツのメディアなどです。だから昨日から外国のメディアの存在について話ができるようになりました。特派員たちがガザに入ってきています。

Q2012年のガザ攻撃と今回では何か違いがありますか)
空爆のレベルも質も違います。今回はF16、ドロン(無人飛行機)、アッパッチ・ヘリコプター、地対地ミサイルなどあらゆる武器を用いています。また標的もガザの指導者たちの大半の家を攻撃しています。すでに125軒のハマス指導者たちの家が破壊されました。ハマス指導者たちは誰もがその家を破壊され、さらに死傷者が出ています。
 もちろん2012年のガザ攻撃もひどいものでした。しかし今回は住民を心底からの恐怖に陥らせています。前回はイスラエルも一般市民の被害を避けようと注意を払っているようでした。しかし今回は誰もがこの攻撃から自由にはなれないのです。自分の家に留まっていたとしても、比較的静かな地区に住んでいても、家が空爆の衝撃で揺れるのです。家の天井が自分の頭上に崩れ落ちるのでは感じるほどです。非常に危険な状況です。
 この状況は前例はありません。こんな事態に直面したことがありません。

Q・なぜイスラエル軍はハマスの指導者たちを攻撃できるのですか。情報をイスラエル側に流すパレスチナ人の「協力者」がいるのですか)
 「協力者」(collaborator)はいつでも存在します。占領者がいる所には必ず「協力者」がいる。彼らが占領者イスラエルの眼、耳、鼻、手となっています。とりわけF16やドロンには協力者が必要です。「協力者」たちは標的の家や車を特定します。その動きや武器倉庫などの情報をイスラエル側に流します。
 イスラエルはハマスやイスラム聖戦のメンバーたちに「死刑判決」を下し、それを実行しています。しかもそれを彼らの権利だと思っている。例えばラジ・スラーニを殺そうと思えば、私の家を爆撃し破壊する。そして家族を殺す。これは戦争犯罪です。誰も暗殺する権利はないのです。組織の指導者たちを「懲罰」するためにこれほど冷血な手法で殺害し、家を破壊することは許さないことです。ジュネーブ条約や国際刑事裁判所でもこれは戦争犯罪です。これは全く違法な行為です。

Q・世界の眼はイラクやシリア情勢に向き、ガザの情勢だけに注目しない状況です。また3人のイスラエル人少年の誘拐と殺害が事の発端であると報道されています。このような国際社会の見方にあなたはどう反応しますか)
 シリアやイラクの問題はあります。イエメンやエジプトやチュニジアの問題もあります。パレスチナだけが特別な問題ではないことはわかっています。
 しかし我われはこのタイミングを自ら選んだわけではありません。
 もう1つ忘れていけないのはブラジルでのワールド・カップです。世界の関心がそこに向かっている時期です。
 しかし私が腹の底から感じるのは、今のガザの状況の特別な“空気”です。一般に国際社会が事態を理解するのに23日を要します。今ここで起こっている事態を国際社会がやっと把握し始めています。
今回のようにテルアビブやエルサレム、昨日のディモナ(イスラエルの核施設のある町)、ハイファへのパレスチナ側のロケット弾攻撃はこれまでにない事態です。テルアビブはマヒ状態にあります。多くの市民がシェルターに隠れ、この3日間は学校や仕事に出られない状態です。イスラエル人はこの事態に怒っています。
彼らは今ジレンマに陥っています。セキュリティー(安全)に不安を感じ、今は「抑止力」について話を始めています。しかし誰も抑止できないのです。ガザからのロケット弾攻撃はずっと続き、ガザ住民は降伏もしません。自分たちの強靭さを自覚しています。もちろん住民はイスラエルの攻撃に苦しみ、恐怖に怯えています。
しかし同時に、この攻撃を甘受し何の抵抗もしない「いい犠牲者」でいいと思っている者はだれもいません。中にはこの被害を自分たちが求めているものを手に入れるための“代償”なのだと考える者さえいます。我われは「いい犠牲者」にはなりません。

他のアラブ世界からも連絡が届いています。エジプトからもです。この2日間に驚いたことにエジプトの知人から電話をもらいました。彼らは「パレスチナ・ガザへの連帯」と言うのです。彼らもとても動揺し、とても後ろめたく感じています。これがパレスチナとそれを取り巻く“空気”です。パレスチナで起こっていることを誰も無視できません。これまでイスラエルといろいろ共謀してきた自治政府のアブマーゼン(大統領)でさえです。西岸のパレスチナメディアも変わってきています。パレスチナTVは24時間体制でガザの状況を伝えています。西岸のメディアがです。
西岸の住民はガザ攻撃に抗議するデモをやり、イスラエルに対する抗議行動を起こし始めています。国連の安全保障会議では、私はナンセンスだとは思うけれど、協議が行われています。国際刑事裁判所もイスラエルを非難し始めています。アブマーゼンはイスラエルを非難し始め、「この事態は決して受け入れがたいことだ。ひどすぎる」と公言しています。彼ははハマス指導者のメシャルと電話で会談し、またエジプト側に国境を開けるように要請しました。

Q・昨日、あなたは私に「人間の尊厳が命より大切だ」と言いましたが、爆撃で家族を殺された住民の中には「ハマスのロケット弾攻撃のために自分たちはイスラエルの攻撃によって、さらに苦しまなければならない。後生だから、ロケット弾で攻撃するのは止めてくれ」という住民も少なくないと思いますが)
もちろん多くのガザ住民は「人間の尊厳が命より大切だ」ということに賛同しないかもしれない。我われは弱い人間だし、個人の利益を最優先に考えがちです。「人間の尊厳が命より大切だ」というのは、私自身について言っているのです。ただ私だけではく、私の周囲の理性的な人もそうです。この封鎖や攻撃の後は、ガザは“動物農場”のような状況です。封鎖、失業、貧困、分断、爆撃、殺戮、流血・・。下水道も管理できず、下水を海に流さなければならず海を汚染している状態、自分の運命も自分で決められず、建設的な生活をすることもできず、普通の人間のように行動することもできない。だからガザの人々はもう失うものはないのです。この悲惨な状況、非人間的な状況に置かれているのです。私たちは今すぐにはパレスチナを解放できなことはわかっています。しかし少なくとも人々はイスラエルの抑圧と攻撃を甘受するだけで抵抗しない「いい犠牲者」ではありたくはないのです。人間としての“誇り”と“強さ”を持ちたいのです。たしかに人々は流血し、気を失い、すべてを失ったという絶望感もある、それでも人々は自由と人としての尊厳を大切に思っているのです。そして自分の子どもたちの眼に、羞恥ではなく、“誇り”をみたいと願っているのです。

=======================================================
(以上転載終わり)
 上記のスラーニ氏の発言に「ガザ中部のハンユニスのアブ・カワレ一家がその一例です。5人の子どもを含む7人を殺害し、28人を負傷させました。」とありますが、「南ドイツ新聞」のミュンヒ記者は同紙12日付けのルポで、この家族の葬儀を取材しています。それによれば、殺された5人の子どもたちの名前と年齢は「Mohammed Kawara 12, Hussein Kawara 10, Abdalla  Kawara 10,Bazel Kawara 8,Kassim Kawara 8」であるとのことです。これだけを土井氏の貴重な報告に付け加えておきます。
今回の「戦争」は2008年、12年の時よりも中東全体の危機が第二次世界大戦後で最も深刻化していることもあり、さらに出口が見えないジレンマに陥りつつあります。そこでこのような子供と女性の犠牲が増え続けることが危惧されます。

以下情報を追加します:

土井敏邦氏の→ツイッター情報によると、スラーニ弁護士は今月初めから日本を訪問して、フクシマ原発事故被害者の皆さんとも話合う予定であったところ、イスラエルによってガザ封鎖され訪問ができなくなったとのことです。これについて朝日新聞が10日付けで報道しており、それをツイッターより拝借します。
朝日新聞7月10日土井氏のツイッターより

 このような情勢を背景に昨日の12日にはドイツのベルリン、フランクフルト、ミュンヘンなど、ほとんどの大都市で1000人から2500人のパレスチナ人による抗議デモが行われ、ベルリンではデモ隊がブランデンブルグ門のサッカーワールドカップの応援会場に押し掛けようとして、→警官隊がかろうじて押しとどめています

Berliner Zeitung Foto: Björn Kietzmann 
さらに、最新情報としてはイスラエルの海軍がガザ地区北部のハマスのロケット基地破壊のため、今回初めて地上軍を上陸させ、パレスチナ側3名を殺害し、イスラエル軍は4名の負傷者を出して引き揚げています。
イスラエルは地上部隊も予備役まで招集していますので大規模な地上侵攻も再びあり得ます。
ガザ地区に侵攻するイスラエル海軍地上部隊Reuters
そんな中で、先ほどの→シュピーゲル誌電子版の報道によると、ドイツのシュタインマイヤー外相は、明日の月曜から2日間、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区を訪問する予定で、「無実の犠牲者の写真を見るのは堪え難い。なんとか紛争縮小の糸口をつかみたい」と述べています。